都市の暮らしで得られるものとリスクヘッジ

都市の暮らしで得られるものとリスクヘッジ

都市の暮らしで得られるものとリスクヘッジ

はじめに

今年は、都市部での災害がクローズアップされています。
台風による川の氾濫や竜巻など風水害により、様々な影響が私たちの生活に現われました。
今回の台風19号では箱根の記録的な豪雨のほか、相模川や多摩川など主要な一級河川が氾濫寸前もしくは一部越水・決壊などが起きました。
また、千葉南房総では、多くの家屋の屋根が風による被害を受け、また電柱がなぎ倒され復旧に大変時間がかかる事態が起きています。

 

都市と地方

都市は基本的には自然に強い構造です。
それは地方と比較することで理解がしやすくなります。地方においては、自然の割合が大きくなるほどにあがらえない自然との共生と寛容さが必要になります。

例えば春先から夏過ぎまでの草刈りバトルや、家の中に入り込んでくる様々な生き物との折り合いに、雪国であれば冬の間の積もる雪との体力戦など。
地方のこのような暮らしと比べ、都市部はこれらの自然に対して相対的に堅牢な都市インフラが整っています。これにより、自然の厳しさと日常的には対峙せず、利便性も享受できます。

都市におけるリスクヘッジ

一人暮らしの高齢者が都市部に増えていくという現象は、前述のような「人のための保護された環境と利便性の高さ」から想像すると理解しやすくなります。

しかし、これらの都市インフラ整備も許容値を超えると今回のような都市災害につながります。

また、普段は利便性の高い交通機関やコンビニなどの店舗への商品物流が停止したり、上下水道や電気・ガスのエネルギー供給が途絶えた途端に、都市機能が停止した時にいかに命を守ることが難しいかという現実を知ります。

地方の強み

その点、地方においては自分も含め作物を育て保存していたりしているので一定期間を周辺と協力しあってしのぐ事も出来たりします。もちろん自家菜園レベルから本業の農家まで様々ですが。

エネルギーについても、地方ではプロパンガス利用であったり合併浄化槽や井戸水といった手段が多く、個別のインフラが確保されています。

共通する地勢リスク

一方で地勢リスクというものがあります。これはある意味で地方と都市共通のリスクといえます。
川の近くや崖の近くなど、その場所に潜む災害リスクがあります。今回の台風19号では、武蔵小杉駅周辺の冠水がありましたが、これも低湿地帯であったことに由来していると推測されます。

川崎市ハザードマップより引用
http://www.city.kawasaki.jp/530/cmsfiles/contents/0000018/18174/03nthm.pdf

暮らしと災害リスク

このように都市の暮らしを享受する上で、どの程度の災害リスクでラインを引くか、自分の望む暮らし(ライフスタイル)とのバランスを考えることは大切です。

例えば川沿いで暮らしたい、毎朝河川敷の遊歩道で犬の散歩をしたい、という場合に氾濫等の水害リスクを完全には回避できません。でも、マンションの上階であれば、今回のようにエレベーターが一時的に使えなくなったり、2、3日程の停電などを許容すれば(日頃から準備をしていれば)、毎朝河川敷の遊歩道で犬の散歩をする暮らしができます。

最後に

このように考えていくと、きちんとその場所の災害特性を掴んだ上で災害時の短期(時に数週間程度の中期)リスクを良しとしていれば、日常の暮らしは満たされます。どのような状況が起こりうるのかとその対策を踏まえてはじめて「備えあれば憂いなし」といえます。

どの場所においても災害リスクは消えませんし、最終的には一定の自己責任はついてきます。建物だけではなく、場所性や災害リスクなども暮らしの場では考えていく必要があるといえます。都市工学的な専門性を必要とする見極めも出てきますので、状況に応じて建築士などの専門分野のアドバイスを求めていくとよいでしょう。